2010年9月23日木曜日

NSAIDの話

NSAIDとはNon-Steroidal Anti-Inflammatory Drug(非ステロイド性抗炎症剤)の略で、化学構造上ステロイドではありませんが、ステロイドのように抗炎症作用を持つ薬剤の総称です。
抗炎症作用の他に解熱作用、鎮痛作用、さらに血小板凝集抑制作用などを有する薬物もあるため、臨床において広く使われています。

NSAIDの作用機序
NSAIDはアラキドン酸カスケード(生体内の反応経路)の酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)の活性を抑え、ヒスタミンやブラジキニンなどの炎症性物質が働くのを抑えて炎症を抑えます。
1991年、COXに2つのタイプがあることがわかり、それぞれCOX-1とCOX-2と呼ばれるようになりました。そしてCOX-1は主に胃粘膜保護や腎血流量の増加などの役割を果たすプロスタグランジンの合成に関わり、COX-2は主に炎症に関与する炎症性物質の合成に関わっていることが明らかにされました。

㈱第一製薬「NSAID HANDY MANUAL」より


つまりCOX-2を阻害すれば炎症は抑えられますが、同時にCOX-1を阻害すると胃の粘膜が弱くなります。痛み止めが胃に悪いのはこういう理由です。
従って、出来るだけCOX-1を阻害せずにCOX-2を選択的に強く阻害すれば、副作用の少ない強力な抗炎症作用が得られると考えられています。

NSAIDの種類

血中濃度半減期による分類


半減期とは服用した薬が体の中から半分なくなるまでの時間、分1とは一日一回、分3とは一日三回服用するという意味です。
半減期の長い薬は一日一回の服用で済みますが、誤って服用した際の危険性が高く、肝・腎機能障害のある方や高齢者で体内に蓄積しやすいです。
半減期の短い薬は逆に服用回数は多くなりますが、量の調節がしやすく、効果の発現も早いため、早期に症状を改善したいときに有用です。

COX選択性による分類
※セレコックスのCOX-1、COX-2への活性は資料が無かったため空白になっています。



IC50とは薬剤がCOX活性を50%抑制する濃度で、数字が大きい方が効き目が弱いという意味です。COX-2選択性とはCOX-1への活性をCOX-2への活性で割った数字、つまりCOX-1への何倍COX-2に対して効くかという意味の数字です。単純に考えてこれが大きいほど胃腸などへの副作用が弱く、炎症作用が強いということになります。
従ってCOX-2選択性の低い薬剤は徐々に使われなくなっていますが、アスピリンはCOX-1を介した抗血小板作用から脳梗塞の予防などに使用されています。

化学構造による分類

同じグループに属するNSAIDは類似した特徴を持っています。

NSAIDの副作用
最も多いのは胃腸障害で、前述したように胃の粘膜を保護するプロスタグランジンの生合成を抑制するため、また直接の胃刺激作用により起こります。空腹時の服用は避け、頓服の場合は牛乳や胃薬と一緒に飲みましょう。
次に多いのが腎障害です。足がむくんだり血圧が高くなったりします。高齢者やもともと腎機能が悪い人は服用に際して注意しましょう。

NSAIDによる治療は対症療法
対症療法とは症状を緩和させる治療のことで、根治療法(病気そのものを治す)や原因療法の反対の言葉です。
痛みの原因そのものを取り除ければそれに越したことはありませんが、なかなかそうはいかない疾患の場合に痛みを緩和させるためにNSAIDを使用します。
しかしNSAIDは前述したような副作用があります。漫然と使用し続けるのにもリスクが伴うため、使用する目的をハッキリさせ、症状が緩和している間は減量ないし中止を考慮し、痛みとうまく付き合っていきましょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿