2011年10月5日水曜日

インクレチン関連薬

インクレチン関連薬

インクレチンの概念
インクレチン(INCRETIN:INtestine seCRETion INsulin)とは、食事摂取に伴ない消化管から分泌され、膵β細胞からのインスリン分泌を促進する因子の総称。
ブドウ糖を経口摂取した場合、同程度の血糖上昇をきたすように経静脈投与した場合と比較して、インスリン分泌ははるかに大きくなることが知られていた。
このことは、経口摂取により誘導される腸管由来のインスリン分泌促進物質が存在することを意味し、そのような消化管ホルモンをインクレチンと総称した。
これまでにGIPとGLP-1の2つのホルモンが知られている。
薬剤としてより有効と考えられているのはGLP-1であり、GLP-1の分解酵素であるDPP4の阻害薬とGLP-1アナログが発売になっている。

インクレチン製剤の作用機序

SU剤はKチャネルに直接作用して脱分極させ、Caチャネルを活性化させることでグルコース非依存的にインスリン分泌を促進させる。
これに対してインクレチン製剤は細胞内のATPがあるレベル以上存在しないとインスリン分泌増強パスウェイが働かないため、グルコース依存的である。
このため血糖値が低いときは働かず、低血糖が少ないと言われる。

DPP4阻害薬の膵β細胞保護効果

DPP4阻害薬を負荷した糖尿病モデルマウスの膵ランゲルハンス島で膵ランゲルハンス島自身の大きさの維持と同時に、インスリン陽性細胞も保持されることが示唆されている。実際、ヒトの膵ランゲルハンス島において、GLP-1は72時間の培養でグルコース刺激によるインスリン分泌を回復させ、膵β細胞の生存能を高めたとの報告があり、GLP-1が膵β細胞の温存、増殖を促進するさまざまな分子機構が解明されてきた。

これまでの糖尿病治療はSU剤やフェニルアラニン誘導体(グリニド系薬)のように膵β細胞からインスリンを分泌させる治療法が主流となっていた。
しかしながら今世紀に入ってから早期からのインスリン導入やインスリン非分泌系の薬剤活用による膵β細胞の質的ならびに量的な保護を目指す治療戦略へと徐々に変遷してきている。
インクレチン関連薬はインスリン分泌作用と、膵β細胞保護作用を兼ね備えた薬剤として期待されている。
しかし現在のところ膵β細胞保護作用に関する報告は極端な実験条件の上で成り立っているものが多く、日常臨床でも同様の効果が得られるとは必ずしも言えない。また未知の副作用の可能性も否定できず、これからもこの薬剤の真価を見極めていく必要がある。

2011年4月14日木曜日

直接トロンビン阻害剤「プラザキサ」

直接トロンビン阻害剤「プラザキサ」(一般名ダビガトラン)

1962年のビタミンK阻害剤(ワーファリン)発売以降、心房細動患者に対する脳卒中・全身性塞栓症の予防薬として有効な抗血栓薬が登場していなかったが、このたび直接トロンビン阻害剤であるプラザキサが発売となった。

血液凝固系におけるトロンビンの生理作用および各抗血栓薬のターゲット
ワーファリン
・トロンビンの前駆体であるプロトロンビンの合成を、その律速酵素であるVK依存性カルボキシラーゼの補酵素であるVKを阻害することで抗血栓作用を発揮する。
・このため多量のVKの摂取でその作用は拮抗される。(納豆などは控える必要がある)
・肝薬物代謝酵素P450による代謝を受け失活する。このため薬物相互作用が多い。
・またP450の活性は個人差があるため個々の患者に応じた用量調節が必要となる。(PT-INRの頻回測定)



プラザキサ
・トロンビンの活性部位に直接結合することで抗血栓作用を示す。
・このためVKの多量摂取で効果が阻害されることはない。
・肝薬物代謝酵素による代謝を受けないので、細かい用量調節は不要である。ただし腎排泄薬物なので、中等度以上の腎障害がある患者には減量の検討が必要。
・肝薬物代謝酵素を介した薬物相互作用は無いが、P糖タンパク質による排泄を受けるので、P糖タンパク質を阻害する薬剤と相互作用が認められる。(ワソラン、アンカロン、キニジンなど)



有効性

ワーファリン(INR2.0-3.0、日本人の70歳以上は2.0-2.6でコントロール)の集団と比較し、プラザキサ低用量(110mg×2回/日)で非劣性、高用量(150mg×2回/日)で優越性が示された。







安全性


頭蓋内出血の発生頻度はプラザキサ低用量、高用量ともにワーファリンと比較して優位に低かった。
ただし消化器系の副作用(消化不良、下痢、上腹部痛など)がワーファリンより高頻度に認められた。






まとめ
・プラザキサはワーファリンと比較してVKの摂取制限が必要ない、頻回の血液検査や細かい用量調節が必要ない、などの点で優れている。
・プラザキサは臨床試験でワーファリンに対する優越性を示したが、これは二重盲検方ではない。
・プラザキサはワーファリンとは異なる機序の薬物相互作用が存在する。
・新規に抗血栓療法を開始する場合、プラザキサはワーファリンと同等かそれ以上に有効な薬剤と考えられる。
・ワーファリンで有効なコントロールが得られている患者に対してあえて切り替える必要があるかは意見の別れるところである。

2011年3月4日金曜日

糖尿病の診断

(1)糖尿病型の判定
・初回検査で次の①~④のいずれかを認めた場合は「糖尿病型」と判定する。

①早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
②経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値200mg/dl以上
③随時血糖値(任意の時間に測った血糖値)200mg/dl以上
④HbA1c(JDS値)6.1%以上

(2)糖尿病の診断手順
・糖尿病が疑われる場合には、血糖値の検査と同時にHbA1cも測定する。
・1回の検査で血糖値(①~③のいずれか)とHbA1c(④)がともに糖尿病型の場合、それだけで糖尿病と診断できる。
・別の日に2回検査を行い、ともに糖尿病型であれば糖尿病と診断できる。ただし少なくとも一方で必ず血糖値(①~③)の基準を満たしていることが必要であり、HbA1cのみの反復検査では診断不可。
・血糖値が糖尿病型を示し、かつ次のいずれかが認められれば1回の検査でも糖尿病と診断できる。
a,口渇、多飲、多尿、体重減少など糖尿病の典型的な症状
b,確実な糖尿病網膜症

(3)正常型
・次の①と②をともに満たすものを正常型とする

①早朝空腹時血糖値110mg/dl
②75gOGTT2時間値140mg/dl

・正常型であっても75gOGTT1時間値180mg/dl以上のものは境界型に順次経過観察をする。
・空腹時血糖値が100~109mg/dlは正常域ではあるが、「正常高値」とする。

(4)境界型
・正常型にも糖尿病型にも属さないものを境界型とし、次のものが含まれる。
①早朝空腹時血糖値110~125mg/dlのもの(IFG)
②75gOGTT2時間値140~199mg/dlのもの(IGT)

(5)妊娠糖尿病
・75gOGTTにて次の基準の1点を満たした場合に診断する。
①空腹時血糖値92mg/dl以上
②1時間値180mg/dl以上
③2時間値153mg/dl以上

・前述の糖尿病の臨床診断において糖尿病と診断されるものは妊娠糖尿病から除外する。